べつに戦ってはいないが……
主催したオンラインイベント「まだまだ!ジャンル迷子オンリー」合わせで、新刊を出しました。
これれす。
7月に「文披31題」というTwitter上の企画で交互連載していたもので、なんかもう色々駆け足だったんですが本にしてよかったです。
部数とか書き下ろし足すかとかいろいろ悩みましたがね〜
もともとネプリで好評なシリーズであるていど知名度(知名度?)が高かったのと、この秋はイベントが詰まってるのと、バラバラだったものをまとめるだけで結構面白くなりそうだったのと、手直し&表紙等事務ページで手一杯だったのと(最大の要因)で通常より多め部数の書き下ろしなしに落ち着きました。
表紙がね〜〜〜いいんですよね〜〜〜
光るの!!
おたクラブさんで「銀箔紙×マットPP」をどうしてもやりたくて、あまり何も考えずに仕様を決めたんですが、これが大当たりでしたね。
まごうことなきステンレスシンク……!!
ごはんメインの話なので、相性もインパクトも抜群で最高の仕上がりとなりました。
さて、肝心の中身についてですが
企画やイベントに便乗してぽつぽつ発表していた短編と合わせ、ほぼ時系列で並べました。
あとがきにも書いてますが、男女でも女女でもなく男男の組み合わせでよかったなと思っています。
男女でご飯の話→どうしても結婚の影がちらつく、フラットに扱いたくてもそれ自体に作為を感じかねない
女女でご飯の話→美容とか健康とか映えとか料理できるできないで値踏みされるとか自分が女性なこともありしんどさとかめんどくささを知りすぎてしまっているのでやりたくない
というわけで男ふたりに落ち着いた、という経緯があります。
「腹減ったー、うめー!!、しあわせ……」
っていう、ただそれだけの話にしたかった。
男の人どうしだって、いろいろあるよね。同期が先に出世したりさ、家族を養ってはじめて一人前とか言われちゃってさ。いまだに、男女それぞれいらんこと言われながら、あるいは言われなくても気に病みながら生きていかざるをえない。
最終的に、本作品でもいまの世の中を反映した視点は外せなかったわけですが(「うまいメシ〜」の終盤参照)、人間、あんまり難しいことばっかり考えて生きてないっていうか、そんな余裕ないっていうか、よそに口出しするなんてずいぶん余裕があるんだねえというか
日常のささいなことに目を向けて人生を謳歌するさまを描きたかったので、派手なことは何も起きません。
人死にもなければ戦いもない。
山あり谷あり事件あり、そういうのはよそでたくさんやってくれてるから私はわたしでやりたいことやる〜〜〜
そういう意味では、沢村もいい性格だけど松橋先輩は得難い人物だと思っています。ほんとうにいい仕事をしてくれました。どうでもいいことは全力でスルーする省エネ気質ながら、意外に興味のハードルが低いので、沢村に付き合ってどんどん世界が広がっていく。
読んでくださる方はきっと、松橋先輩に近い視点で話を体験してるんじゃないかな。大した面白みもなかった日常に、新しい扉が開く音を聞いている。
この話には、「いままでなんとも思わなかったけど実はこれって面白いんじゃないか」を詰め込んであります。枝豆の皮むきとか、なすの色変化とか、妙なところでディテール描写が多いのはそういうわけです。
はじめてなにかに取り組むときって、「のこぎり引いたら切れた」とか「紙の目に沿って折ったらガタガタしなかった」とかそういう、経験者が見過ごしがちな感動ポイントがたくさんあって、これっていくつになっても楽しいことだと思うんですよね。
松橋先輩のいいところは、そういうものに素直に心を動かされるところです。なので、私はどちらかというと先輩推しです。
おかげさまで、本作は本にしてからなかなかのハイペース(当社比)で人の手に渡っております、ありがとうございます。エモとか尊みとか特になくても受け入れてもらえるんだなあ、とだいぶ自信になりました。
早く対面イベントに持ってってやりたいなー、会場でギラギラさせてニヤつきたいです。直近は11月の文学フリマ東京。直近と言うにはちょっと遠いんですよね〜、待ちきれないぜ。
お通販は架空ストアさんにお願いしておりますので、なにかのついでがございましたらぜひ。
引き続き、なんでもない人たちの日々の喜びを書き続けていきたい所存です。